日本時間2月24日から25日にかけて行われた「2024 Bathurst 12 Hours presented by Coach Dave Delta」にPista × HiMA RACiNGはしーなありさ、ショージ、K、SUBARUのドライバー4名、車両はこのレースから投入されたFerrari 296 GT3で日本時間16時のレースに参戦した。
Race Splitsは12あるうちの3つ目で、SoFは3076とレベルの高いところに振り分けられた。
HiMA RACiNGとしては2018年以来となるバサースト12時間レース。前回の挑戦ではクラッシュやエンジンブローなど厳しいレースとなったが、あの時よりも様々なレースを乗り越え強くなったHiMA RACiNGは、雪辱を晴らすためオーストラリアが誇る山岳サーキットへと挑む。
予選:19位 気温 21℃/路面温度 22℃
予選はシム内時刻5:40に開始された。
チームが見守る中、暗闇を跳ね馬が駆けていく。予選を担当したのはショージ。
2周のアタックで争われた予選でPista × HiMA RACiNG 296 GT3は47台中19位と中段に沈んだ。最初のアタックは小さいミスはあったが2:03.838で8番手タイムとなったが、2周目が上手くまとまり切らず2:03.827とタイムを伸ばすことが出来ず19位となった。
決勝:11位 気温 21℃/路面温度 22℃
決勝も朝日が昇る前の5:50にスタートが切られた。
スタートドライバーはしーなありさだが、Pista × HiMA RACiNG 296 GT3は大事を取ってピットレーンスタートを選択。これにより46位からレースを始めることになった。一見消極的な判断に見えるが、この判断はマウントパノラマというコース特性とバサースト12時間レースのオープニングラップの傾向からの決断だった。
結果としてこの判断が功を奏した。2コーナーで8番手スタートと9番手スタートの911 GT3 Rが起因となる進路を塞ぐクラッシュを回避することが出来た。これによりほとんど最下位だった46番手から1周で24番手まで順位を戻すことに成功する。
2周目から21番手の02号車M4 GT3から連なる6台の集団でレースが進んでいく。マウントパノラマはコース幅が狭い市街地コースという面があり、オーバーテイクをするのは簡単ではなくミスを待つような展開となった。
3周目に11位を走行中だった19号車296 GT3が4コーナーでスピンこれによって順位が1つ上がり23番手となった。
20番手争いは23番手を走るPista × HiMA RACiNG 296 GT3の前を行く181号車M4 GT3がさらに前を行く16号車296 GT3を攻めたてる。直線スピードが速い181号車M4 GT3は2コーナーや21コーナーでマシンを左右に振り前を伺う。そんな中で迎えた14周目の最終コーナー。16号車296 GT3と181号車M4 GT3がサイド・バイ・サイドで進入していく。181号車M4 GT3がアウトから被せに行くが抜き切ることが出来ず、16号車296 GT3はブロックラインを取ったことによって最終コーナーの立ち上がりが鈍った。Pista × HiMA RACiNG 296 GT3はここでトラクションをしっかりかけて181号車M4 GT3のイン側にマシンを並べ1コーナーへ。並んだままの状態で立ち上がり直線勝負になったが、181号車M4 GT3のストレートスピードには敵わず2コーナーで抜き返され振出しへと戻った。
そしてまた膠着状態に戻った状態が続いた17周目のコロラド・ストレート終わりの21コーナーで20番手を走る02号車M4 GT3がコーナーの進入でバランスを崩してしまう。これに16号車296 GT3が追突してしまい集団に混乱が生じる。だがこの混乱を上手く躱すことができ図らずも順位を上げることに成功し21番手に浮上した。
前が開け16号車296 GT3との19番手争いへと変わったが、状況はこちらが有利であった。Pista × HiMA RACiNG 296 GT3のレースペースが1秒近く速いペースを刻んでいた為、19周目の21コーナーで難なくオーバーテイクを決め19番手に順位を上げた。
その後は完全に前を遮るものが無くなったPista × HiMA RACiNG 296 GT3は勢いそのままに後ろを突き放す。だが27周目の4コーナーで1台の車両がスピンしていた。これを回避するため速度を落とすことを余儀なくされたPista × HiMA RACiNG 296 GT3は、22周目に順位を20番手に上げていた77号車M4 GT3との差が縮まることになる。
差は縮まってしまったが、レースペースに余裕があったため抜かれることはなく29周目に同じタイミングでピットに向かうこととなった。
ドライバーはしーなありさからショージに変わりピットを後にする。77号車M4 GT3との位置関係はピットでは変わらなかったが、アウトラップの13コーナーのブレーキングでバランスを崩してしまう。危うく壁に接触しかけたが、寸でのところでこれを回避することが出来た。後ろから来ていた77号車M4 GT3とも接触はなかったが、これにより順位を20番手に落とすことになった。
この頃にはコースは日が昇り始め、朝焼けで辺り一面はオレンジに染まった。
とても綺麗な光景であるが、ドライバーとしては下りセクションが始まる11コーナー「スカイライン」が直射日光により視界が悪い状態となるため、素直にこの光景を楽しむ余裕はない。ドライバーの経験と集中力が問われる時間だ。
タイヤが暖まりグリップするようになってからは、好ペースで周回を重ねていくが、前に出た77号車M4 GT3もこちらと同等のレースペース。なかなか空いた差を埋めることが出来ない。
52周目に14番手を走行中だった122号車R8 LMS EVO2が18コーナーでスピン。ブラインドコーナーのため危ないシーンであったが、接触なく無事に回避することが出来た。しかし回避のために減速を強いられタイムを失うこととなる。
周りでスピンやクラッシュなどが多く発生しているが、レースは始まってまだ2時間しか経っていない。如何にこのバサースト12時間レースが難しいレースなのかを物語っているようだ。Pista × HiMA RACiNG 296 GT3は目の前で起こることに対してスポッターが目を光らせ、ドライバーにいち早く情報や指示が飛ばせるように万全の態勢でサポートを行う。
その後は大きな事故もなく58周目にピットイン。ドライバーをしーなありさに戻してコースに戻る。
ピットアウト直後に周回遅れの車両に引っ掛かってしまったが、60周目にこれをパスし6秒先を行く77号車M4 GT3を追いかける。
1周する毎に少しずつ差を縮めていく中で77号車は69周目の21コーナーで7号車296 GT3を捉え順位を13番手に上げこちらを引き離そうとする。しかしPista × HiMA RACiNG 296 GT3もこの時点で後方4秒まで差を詰める。
これがプレッシャーとなったのか続く70周目の4コーナーで77号車M4 GT3のリアがブレーキングで流れてしまい、右リアから壁にヒットしてしまう。大きなダメージを負った77号車M4 GT3は何とか抵抗するものの、71周目の21コーナーでマシンを止めきれずコースオフ。これによりPista × HiMA RACiNG 296 GT3が14番手に浮上する。
順位を上げたPista × HiMA RACiNG 296 GT3はさらに前を行く7号車296 GT3を追うためペースを上げていく。
71周時点で6.5秒離れていたが、10周をかけて差を0.6秒にまで詰めることに成功する。ここから13番手を争うことになったものの、81周目の最終コーナーで7号車296 GT3がオーバーランしたことで労せず13番手に順位を上げた。
87周目に3度目のピットストップを行いドライバーをショージに変えてピットアウト。
14番手でコースに戻ったPista × HiMA RACiNG 296 GT3は、さらにポジションを上げるため13番手を走る2号車911 GT3 Rに対してプッシュを始める。前方との差は9.5秒あった。ただその間もコースではアクシデントが続く。92周目時点で1位を走っていた41号車296 GT3が4コーナーでの混乱を避けるために減速をしたところ後続車に追突され戦線を離脱してしまう。これにより12番手となったPsita × HiMA RACiNG 296 GT3だったが、2号車911 GT3 Rに対して2秒縮め7.5秒まで迫ったが、ピットタイミングとなり抜くには至らなかった。
116周目の4度目のピットでショージからSUBARUにバトンを繋ぎ第5スティントが始まる。
レースは5時間を経過し、気温 23℃ 路面温度 31℃へと温度は上がり、徐々にコンディションは厳しくなっていく。その影響もあってかPista × HiMA RACiNG 296 GT3のペースは大きく落ちてしまう。この間に2つ順位を落とし14番手となったが、アクシデントなどもなく周回を重ね145周目にピットストップし、ドライバーをしーなありさへと変わりピットを後にする。
しーなありさのスティントでは特に動きはなく無難に走り切り173周目に再びピットへ。SUBARUへドライバーを変えピットアウトしたが、コンディションは路面温度 45℃となりタイヤに厳しい時間帯になっていた。
高温となった路面に苦戦しながらも周回を重ねていたPista × HiMA RACiNG 296 GT3だったが、ピットタイミングが近づいていた196周目にアクシデントが発生した。最終コーナーへと向かっていたPista × HiMA RACiNG 296 GT3がブレーキタイミングを誤りオーバーラン。何とかコースには留まってはいたが、後続車に追突されてしまいマシンはコースとは逆向きになってコース脇のタイヤバリアにぶつかって停止。幸い2つの接触は速度が遅い状態でのことだったのでマシンの損傷は最小限に済んだ。
これが大幅なタイムロスとなってしまったが、順位は14番手をキープ。アクシデントの2周後となる198周目にピットに向かい少しのリペアを行い、ドライバーをKに変わりピットを後にした。
マシンのダメージはほとんどない状態でコースに復帰したPista × HiMA RACiNG 296 GT3だったが、レースの状況はあまりいい状態ではなかった。
14番手と順位は変わっていなかったが、後方とのマージンはペースが上がらなかったこととアクシデントもあり、1分以上あった差は14秒にまで縮まってしまい余裕がなくなっていた。さらに路面温度は49℃となりレース中一番厳しい時間帯となっている中で、後方から来る181号車M4 GT3がこちらよりも1秒以上速いペースで追い上げてきていたのだ。Kもこれに対して必死に抵抗するが、その差は徐々に縮まっていく。
チームからもプッシュの指示が飛ぶ中でKのペースはコース上でも速い方であったが、181号車M4 GT3のペースはさらにこれを上回っておりコース上最速ペースでこちらに迫ってくる。
途中ピットタイミングの兼ね合いもあり順位は12番手に上がったが、その時には後ろから忍び寄る影は大きさを増していた。
相手に抗いながら戦ってきたが220周目には真後ろまで接近されてしまう。そして迎えた21コーナーでPista × HiMA RACiNG 296 GT3は先にディフェンスラインを取っていたが、そこをこじ開けるように181号車M4 GT3がインに来たところで接触してしまう。これによりバランスを崩しコースアウト。13位に順位を落としたが、マシンに損傷はなかったためコースに戻ることが出来た。
混乱はあったもののペースはそのままに走り続け、227周目にピットへ向かいドライバーをショージに変えて再びコースに復帰した。
ショージに変わったタイミングでレースは残り4時間を切った。
12時間レースも終盤となったバサーストは開幕のサバイバルレースとは裏腹に、台数が減ったこともあって静かに時間が進んでいく。
Pista × HiMA RACiNG 296 GT3は路面温度は落ち始め46℃に下がっていく中でショージ、Kが安定したペースで虎視眈々と走行を続けていたが、275周目に再びレースは動いた。
先ほどオーバーテイクを許してしまった181号車M4 GT3が4コーナーでスピンをしていた車両を避けきれず追突してしまう。これにより大きなダメージを受けた181号車M4 GT3はリペアのためピットに戻り、Pista × HiMA RACiNG 296 GT3が12番手に返り咲いた。
順位が上がった後は282周までKが走りドライバーはショージに変わり走行を続ける。
レース時間が1時間半を切った294周目に7番手を走行していた車両が21コーナーで大クラッシュを起こした影響でPista × HiMA RACiNG 296 GT3が11番手に浮上し、310周目に最後のピットストップでしーなありさにドライバーを変えてそのまま走り切り、2018年以来のバサーストを大きなトラブルなく11位で完走を果たした。
昨年鍛えられたレースでの安定感を遺憾なく発揮したPista × HiMA RACiNG。今回の結果はその賜物だったと思う。
だが同時にトップ10も狙えるレースペースがあったのも事実だ。アクシデントによるタイムロスは決して小さいものではなく、後の展開を大きく変えてしまった。次回のセブリング12時間レースではよりミスを少なくしてさらに良い結果を求めていきたい。
ドライバーコメント
ショージ
今回のバサースト12Hレースで初めて予選を担当しました。しかし、計測の2周ともまとめることができず19番手となり悔しい予選となりました。
レースでは前半と後半に2スティントずつ走ることになりました。いずれのスティントでもピットアウト直後にペースが上がらなかったり、コースアウトしかけたりとリズムをつかむことに苦労しました。
燃料が軽くなると上位の車に近いペースで走れたものの課題が残る走りとなりました。一方で、マシンを壊すことなくバトンを繋げられたことには満足しています。
レースを通してクラッシュやスピンが発生し気の抜けないレースとなりましたが、チームの戦略やレース中のサポートにより上位を争うことができました。
レースの経験値がまだまだ少ないので、今回のレース内容をから得られたものを次回のレースにしっかり生かしていきたいと思います。
K
今年はじめての12時間耐久レースでした。2年ぶりのバサーストでしたが、マシンを大きく損傷することなく気持ちよく走れました。途中バトルがあり、自分のもてる全力をもって対決しましたが力及ばず抜かされてしまったのは悔しかったです。
また、今回初めて296 GT3に乗らせてもらいましたが、ベースセットでも好印象で更に乗りやすいセッティングだったお陰もあり、終始安定して走れることができました。
このチームはFerrariのGT3を選択することが比較的多いので、これから仲良くしていけたらと思います。
SUBARU
バサースト12時間レースを終えて、まだ走りが甘いし詰めが甘いと感じました。
ピットスタートを選択したことで46位からのレースでしたが、チームの頑張りもあって11位での完走となり、結果としては良いものになりました。しかし個人的な内容は良いものとは言えませんでした。
同じ周回のライバルに簡単に追いつかれ、周回遅れのマシンにも抜かれ、極めつけはアンダーステアを出しまったところで周回遅れに追突されてしまうという状況でした。正直レースとは程遠いものでした。
それでも、チームのサポートのおかげで上位でフィニッシュできたことは嬉しいですが、同時に悔しい気持ちです。
次回のレースがいつになるかはわかりませんが、より成長できたと思えるような走りを目指したいと思います。
チーム代表 コメント
しーなありさ
HiMA RACiNGとしては2018年以来のバサースト12時間レースは非常にエキサイティングなものでした。
途中追突される場面などありましたが、サバイバルレースの中で大きなトラブルもなく各ドライバーが割り振られたスティントの中で、自分達の走りをしっかり出来たことが今回の結果をもたらしたのではないかなと思います。
今回初めて自分が組んだセッティングでのレースでした。
時間がない中で車両のデータ取りや調整などを行ったため忙しいレースウィークになりましたが、チームと共に作業を行えたことは自分の学びにもなり充実したものでした。次戦セブリング12時間レースではiRacingの環境も大きく変わるので、しっかりと対応できるように作業を進めていきたいです。
個人としても2年ぶりとなるバサーストは変則的な4スティントでしたが、パフォーマンスを十分に発揮できたと手応えを感じています。
大きなミスもなく良いペースでラップすることが出来てようやく強さを出せたと思います。この調子で続くレースも良い位置を目指して走りたいです。
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